にゃんこくらげの読書日記

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本好きの会社員が、好きなように本の感想を書くだけのブログです!

『ののはな通信』-誰にでもありえたもう一つの物語

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#三浦しをん

#ののはな通信

#あらすじ

ミッション系の女子校に通う"のの"と"はな"。

頭が良く現実的でクールなののは、実は狭くて決して裕福ではない家にコンプレックスを抱いている。

一方のはなは、外交官の家に生まれ天真爛漫で明るく社交的な性格だが、優秀ではない自分の道に迷いを感じている。

 

家柄も性格も真反対な2人だが、学校で毎日会うにもかかわらず文通まで行うほどの大の親友。

しかし、ののが友情以上の想いをはなに明かしたことで、2人の関係は変わっていく。

 

不器用で密やかな恋、秘密と裏切りによって崩壊する関係、拒絶と構築、そして…

少女から大人に、大人から更に成長していく2人の関係と心を細やかに描いた超大作。

 

#感想

素晴らしい作品でした。

 

まずすごいのは、物語は全てののとはなの文通で成り立っていますが、この手紙の内容だけで、2人の関係と心の成長が全て見て取れるのです。

一章ごとに成長した、それぞれの年齢の2人に違和感が無い。成長した部分と変わらない部分が、きちんと一人の人間の中に描かれています!

改めてしをん先生は想像力の天才。

 

特に面白かったのは2人の恋愛を中心にした心模様だけでなく、人としてのものの考え方をみることが出来たこと(❛ᴗ❛๑)⁾⁾

例えば、ある時ののが語った

ドラマ『白い巨塔』で描かれたような教授夫人会がいや〜な感じなのは、そこに男性社会の地位や立場が、そのまま持ちこまれているからだという気がするの。(中略)

つまり、「陰湿でこわい」のは権力構造。臆面もなく権力をふるい、権力構造に平然と組みこまれていく人々(男女問わず)のほうではないかしら?

これにはとても共感

しかも、新たな発見がありました。

 

女の敵は女」のような、男性がその方が都合が良いから作ったような言葉同様、女性社会は「陰湿でこわい」とされる(男の嫉妬や出世争いはどうなんだよ!)のには男性からの故意な感じを受けていました。

でも、この思い込みすらも、男性への偏見だったのでは?と思い至った次第Σ(O_O)ハッ!

 

まさに"男女問わず"、問題点は別にあったんですよね。

うーん、ののちゃんの公平な考え方、好きだなぁ。

 

そして、こういう風に自分の考えを語り合える友達と、そんなことが日常茶飯事だった学生時代の、なんて尊くてきらめいて見えることよ!

 

大人が描いた"女学生"ではなく、ののとはなの言葉には、リアルな温度と色がありました。

だからこそ、思わず思い返さずにはいられないんですよね。

過去、自分が通って来た道を。

この物語の一番素晴らしい点は、誰もがこれを読みながら、自分の"あったかもしれないもう一つの物語"を振り返ってしまうところだと思います。

 

あの時、その瞬間を一生懸命に生きて、悩んで考えて、踏み出したり踏み出さないことを選んだ日々(学生時代だけに限らず)

破局か寛容か、また、復縁か終息を選ぶのか…

 

決して今に後悔している訳では無いけど、もしかしたらあったかもしれない、もう一つの人生に少しだけ想いを馳せてしまう。

きっと誰もが、少しの胸の疼きを感じる物語。

とても素晴らしかったし、個人的にこのタイミングで読めたことに感謝したくなりました。

 

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