#おはなしして子ちゃん
#藤野可織
・
#あらすじ
『おはなしして子ちゃん』
学校の理科室に閉じ込められてしまった私。
いじめていた子の仕返しだろう。
手入れされていないホルマリン漬けの様々な物がウヨウヨとする中で、私に「お話をして」と話しかけてきたのは…
『アイデンティティ』
「鮭です」「猿です」「いいえ、人魚です」とそれは言う。
人魚を製造する工場で、人魚作りの腕が一向に上がらない助六の作った"それ"は、何度教えても人魚になりきれない。
同じく鮭と猿で作られた仲間たちは皆、人魚としての自覚を持ち始めているのに。
やがて"それ"らが出荷される日がやってくる。
『ホームパーティーはこれから』
今日は私にとって、とても重要な日。夫が会社の人たちを家に連れてくるのだ。
良い奥さんだと思われたい、こんな人と友達になりたいと、この人にはその価値があると思われたい。
だから私は朝から、部屋の掃除に料理に奮闘していた。なのに、気がついたらインターホンが鳴っていて。
まだ途中なのに、まだノーメイクでボサボサ頭なのに、どんどんどんどん人が入ってきて止まらない。
#感想
10作の短編集。
全編通して、共通する空気感があります。
なんていうのかな、不気味だけど怪奇とかホラーというほどではない。なんか気持ち悪いのに、可愛い?
不思議!不思議小説!
絶対に、絶対に無い奇妙な世界。だけど奇妙にリアルで、始めに抱いた違和感はすぐに消えて受け入れてしまう。
寝ている時に見る夢みたいな、変に違いないのに、そこにいると何故とか考えずに当たり前に受け入れているあの感じ。
読んでいてとても、星新一氏を彷彿としました。
そして、タイトルの付け方が秀逸!(むしろ表題の『おはなしして子ちゃん』が一番シンプルかも)
どうしてこのタイトルなのかしら、と思いながら読み進めるけど、終わる頃にはそれ以外には考えられないほどしっくりきています。
『今日の心霊』とか、"今日のコーデ"とかけてるんだろうな。センスだわぁ!
『おはなしして子ちゃん』から始まって、その奇妙さっぷりは特急列車のようにどんどん加速します。
3作目『アイデンティティ』を読んだ時には、そのヘンテコな世界でどことなくまぬけな登場人(?)物達が右往左往している、ある種微笑ましいような話なのに、その発想力には度肝を抜かれました。
どんな時に思いつくんだよ、こんなヘンテコな話!そして、なんでこんな綺麗にまとめられるの?!
総じて面白かったんですけど‼︎
藤野さんのショートショート(あえてそう呼ぶ)は、バカにしてるでしょって言いたくなるちょけた残酷さと、自由な発想がクセになりそうです。