にゃんこくらげの読書日記

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本好きの会社員が、好きなように本の感想を書くだけのブログです!

『連続殺人鬼カエル男』-傑作!ジェットコースターミステリー

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#連続殺人鬼カエル男

#中山七里

#あらすじ

埼玉県のあるマンションで、異常なものが発見される。それは、口からフックで吊るされた全裸の女性の死体だった。「きょう、かえるをつかまえたよ」死体のそばには幼児が書いたような稚拙な紙片。


埼玉県警の古手川は、捜査の中で過去に犯罪歴のある自閉症患者の勝雄と保護司のさゆりに出会う。

"カエル男"と呼ばれる犯人の見境ない凶悪殺人に、やがて世間はパニックになり精神疾患者や異常犯罪虞犯者リストの開示を要求しだす。

勝雄とさゆりの元にも不安にかられた群衆が押し寄せてきて…

一体誰が何の目的で犯行を行なったのか!?


#感想

読んでいて、怖くて怖くて仕方がなかった。

エゲツない殺人描写。犯行の異常性。恐慌に陥った一般市民。司法への信頼の揺らぎ。


なのに文字を追う目は止まらなくって、息を飲んだらそのまま呼吸を忘れそうな位だった!

真に怖ろしいのは犯罪や暴動そのものではなくて、それが起こるに至った環境や人の中に潜む狂気。


よくもまぁ、こんなに次から次へと災難を起こすものだと感心しました。

読み応えがあり、こちらは大満足な一冊ですが、古手川くんは大変過ぎの災難過ぎで…心身共に労ってあげたくなります。

 

▼まさかまさかの続編も…!

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『弁護側の証人』-思わずエッと見返す往年のミステリ

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#弁護側の証人

#小泉喜美子

#あらすじ

元ストリッパーの"ミミイ・ローイ"こと漣子は、八島財閥の放蕩息子杉彦に見初められ、大恋愛の末に結婚する。


杉彦の親族や女中達からは歓迎されず嫌がらせを受ける漣子だが、持ち前の明るさと杉彦への愛で乗り切ろうと奮闘する。

ところが義父が何者かに殺され、夫婦は離れ離れになってしまう。金網越し悲しげな表情で諦めかける杉彦に、諦めるのは早いと言う漣子。

彼女は果たして真実を見つけられたのか…?!


#感想

ちょっと古めかしい言い回しもあるけど、現代では出せない味があって私は好みでした。


驚きの結末もですが、登場人物達が魅力的でシリーズだったら読みたい程。

主人公ミミイ・ローイは応援したくなる。教養は足りないかもしれないけど、一生懸命でスレてないんですね。元ストリッパーとのギャップが良い。

あと元同僚のエダに、彼女が連れてきた清家弁護士。個性豊かな彼らが物語に良いアクセントをつけてくれます。惜しいのは、そんなにキャラが立っているのにちょっと出番が少なかったこと。

サラッと書いたけど、結末にはまんまとしてやられました!途中で感じた違和感を、なぜスルーしてしまったのか…


面白い小説は、年数が経っても面白い。賛否もあるようですが、私は叙述トリックのレベルが高いと思いました。

『十角館の殺人』-そして誰も…?結末を見届けよ

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#十角館の殺人

#綾辻行人

#あらすじ

大学のミステリ研究会の面々は、有名な殺人事件のあった島を訪れる。ちょっとした好奇心での滞在のはずが、一人また一人と殺されていき、彼らは疑心暗鬼に囚われていく…


#感想

アガサ・クリスティのオマージュという本作品。

ははぁ、なるほど。新本格ミステリの先駆けと言われるのはしごくもっとも!新本格と言われながらも、先人達へのリスペクトと愛をたっぷり感じます。


いわゆる"島もの"とか"雪山もの"が成り立つ状況って、現代ではなかなか難しいですね。だからこそ当時の、自然に発生したある種の密室内での事件、そしてその解明にはロマンと心躍るものがあります。個人的には尊さすら感じます。

(以降はちょっとネタバレ

 未読で今後読むかもな人は引き返してね)

 

 

オマージュ作品という以外、前情報無く読んだので"島田潔"の名前が出てきた時には興奮しました。いいね!ミステリは先人達あってこそ磨かれていくものだと思うので、先人へのリスペクトは共感と好感が持てます。

何やら偉そうですが、ミステリ読者には多かれ少なかれそのような傾向があるのではと思うのであります(偏見)。


さて、厳密には密室では無いわけですが、そのように見せかけるのも作者の腕です。個人的には、動機や"捕まらない動機"にいささか釈然としないものを感じるのですが、実際に殺人を犯すまで追い込まれた心理というのはそういった歪みを内蔵している方がリアルかもしれません。

手放しでベタ褒めとはいかない口調ですが、登場人物はキャラが立っていて魅力的で、もちろん十分に面白い作品でした。

『孤狼の血』-ばりカッコいいぜ、悪い男たち

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#孤狼の血

#柚月裕子

#あらすじ

広島の呉原東署に赴任された新米刑事の日岡は、ベテラン大上の元につく。大上の強引な捜査に戸惑うものの、暴力団との付き合い方を学んでいく日岡。ところが金融会社の社員が失踪した事件を皮切りに、危うく保っていた暴力団同士の派遣争いの均衡が崩れる。

プライドが火花を散らすハードボイルド。


#感想

暴力団同士の抗争

男だらけのハードボイルド…

どちらかというと苦手ジャンルっぽいな、という印象でしたがオススメされたので着手。そしたらもう、止まらなくなり一気に読了。メンズがまたカッコいいんだ!

私は一ノ瀬派。

えー?まぁ確かにぃ?彼、ちょっと冷たいとこもあるんだけどぉ

筋通してるっていうか〜

 

・・・

はい。キモいですね、すみません。


よくある、古いやり方を続けるベテランとそれに反発する若手コンビ、というものでは無いのが良い。日岡くんは黙って従うんですよね、大上さんに。なんでも反発すれば良いってもんではないんですよ。


古参の人っていうのは、ある程度その道の知識や経験を積んでるもの。それには敬意を払い、まずはよく見てみる価値がある(多かれ少なかれだけども)。

コメディーならエンタメとして過剰なフィクションもありなんだけど、ハードボイルドに警察や暴力団という特に上下関係に厳しい世界を描くなら、郷に入っていただきたい。そこら辺の違和感が一切ありませんでした。素敵。

ほんまに作者、女性かい?!

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『斜め屋敷の犯罪』-このトリックはスケールがデカい!

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#斜め屋敷の犯罪

#島田荘司

#あらすじ

北の最果てに建てられた"斜め屋敷"とも呼ばれる一風変わった館、流氷館。オーナーである大会社の会長浜本は、知人を招いてクリスマスパーティを催す。

ところが思惑渦巻くこの屋敷で連続殺人が起きてしまう。死体は明らかに他殺の様相だが、部屋に人の入れる余地はなくて…

御手洗潔シリーズ2作目!


#感想

このトリックはすごい!惜しい所をかすっても、真相に辿り着けた人っていたのかしら…

前作同様、昭和の雰囲気漂う作風も好みです。

 

ただ…面白いんですけどね、今回御手洗さんの登場が少なくって…

ワタクシこのお店は雰囲気も味も好きなんだけど、お気に入りのカレがいないんじゃあちょっと…ネ

という気分。

その代わり、待ちに待って登場したシーンでは、とびきりトリッキーで奇人変人っぷりが炸裂してました笑

場違いにはしゃぐ御手洗さん。あー、可愛い

やっぱり御手洗潔シリーズでは、たっぷり御手洗エッセンスを堪能したいものです。

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『青の炎』-少年は破滅に向かって走る

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#青の炎

#貴志祐介

#あらすじ

高校生の櫛森秀一は、成績優秀で学校での友人関係は良好、母と妹との家族仲も良く充実した生活を送っていた。母の元再婚相手である曾根が現れるまでは。

大切な家族を踏みにじろうとする曾根に怒りの炎を燃やす秀一は、曾根の殺害を計画し、惜しみない努力を始める…


#感想

読後、深く考え込んでしまった。

悪を未然に防ぐ為には何も出来ないのか。まだ行われていないだけで、ありありと目の前に迫っているのが分かる災難に対して、先に火の粉を払う行為は許されないことなのか…


秀一は賢く家族想いで、どんなに将来有望かと思われます。殺人を完全犯罪にする為に繰り返し行う実験の様子も、それが犯罪でなければとても爽やかな描写で描かれています。

だからこそ、大人の私達はその後に待ち受ける破滅の気配になんとも言えない悲しさを覚える。


貴志さんの残酷さが存分に発揮されていました。

避けたいものの、これ以外の結末は無かったと思う。

エグられるが、是非読んでもらいたい一冊。

 

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『テロリストのパラソル』-男は手に入らなかったものを想う

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#テロリストのパラソル

#藤原伊織

#あらすじ

くたびれたアル中のバーテンダー島村は、やわらかな陽射しの中いつもの公園でウイスキーを呷っていた。そんな穏やかな時間が、突然の地響きと悲鳴で壊される。凄惨な爆弾テロ事件。


事件の目撃者となった島村の元に、物騒な男たちや昔同棲していた女の娘が相次いで現れる。彼女は、母親が例の爆弾テロ事件で命を落としたと告げに来たのだ。

やがて事件の真相を追う島村は、かつて仲間達と大学闘争を起した日々のことを思い返す。運命の歯車は、いつから回り始めたのか…


#感想

突如現れた美(少)女、塔子。彼女は若くミステリアスで、大人びているかと思えば無邪気な一面も見せる。ハードボイルドの世界では、ザ王道なヒロイン。

この小説に色を見るなら、全体的に灰色がかった物語に、塔子がビビットな赤や黒といった色を差し、もう一人影のヒロイン塔子の母である優子は淡い色合いを添えているように思う。


後半で優子の詠んだ歌がサラリと出てくるのだが、それがあまりに綺麗過ぎて悲しくなった。

望んでも手に入らない、どうしてもどうしても欲しかったもの。思い焦がれる炎が、なにもかも焼き付くしてしまった。それは本人さえも望んでいなかったんだと思うし、そう思いたい。

なりたい自分になれないことはとても苦しい。でも、ふと顔を上げて周りの人を大切にしたくなる、後を引く本です。

江戸川乱歩賞直木賞のW受賞はダテじゃない!

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