#テロリストのパラソル
#藤原伊織
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#あらすじ
くたびれたアル中のバーテンダー島村は、やわらかな陽射しの中いつもの公園でウイスキーを呷っていた。そんな穏やかな時間が、突然の地響きと悲鳴で壊される。凄惨な爆弾テロ事件。
事件の目撃者となった島村の元に、物騒な男たちや昔同棲していた女の娘が相次いで現れる。彼女は、母親が例の爆弾テロ事件で命を落としたと告げに来たのだ。
やがて事件の真相を追う島村は、かつて仲間達と大学闘争を起した日々のことを思い返す。運命の歯車は、いつから回り始めたのか…
#感想
突如現れた美(少)女、塔子。彼女は若くミステリアスで、大人びているかと思えば無邪気な一面も見せる。ハードボイルドの世界では、ザ王道なヒロイン。
この小説に色を見るなら、全体的に灰色がかった物語に、塔子がビビットな赤や黒といった色を差し、もう一人影のヒロイン塔子の母である優子は淡い色合いを添えているように思う。
後半で優子の詠んだ歌がサラリと出てくるのだが、それがあまりに綺麗過ぎて悲しくなった。
望んでも手に入らない、どうしてもどうしても欲しかったもの。思い焦がれる炎が、なにもかも焼き付くしてしまった。それは本人さえも望んでいなかったんだと思うし、そう思いたい。
なりたい自分になれないことはとても苦しい。でも、ふと顔を上げて周りの人を大切にしたくなる、後を引く本です。