#夜市
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#あらすじ
「夜市」と「風の古道」の2作収録。
「夜市」
女子大生のいずみは、高校の同級生裕司に誘われ夜市に出かける。
道中裕司から説明された話によると、その夜市では、この世では決して買えないものが売り買いされているという。
子どもの頃に弟と夜市に迷い込んだという裕司は、"野球選手の才能"がどうしても欲しくなった。だが手持ちは無く、そして夜市では買い物をしない者は客とはみなされない-
幼い裕司はどうやって夜市から帰ったのか?そして何の為にまた戻ってきたのか…
#感想
子どもの頃の罪を、ふいに思い出すことがあります。
小学生時分、ケンカした友だちをキツい言葉で言い負かしたこと。
当時は得意になってたけど、大人になってから不意に"あぁ、なんて酷いことを言ったんだろう…"と後悔したり。
その友だちとは当時も特別仲が良かった訳じゃ無いし、もう名前も顔もうろ覚えでしかないんだけど、その出来事だけは苦い思いと共に時々フラッシュバックします。
その他にも、保身の為についた嘘や、構ってほしくてかけた迷惑。
列挙すればキリが無いし、もしあの頃にもう少し分かっていればと思うと、身悶えて胸が苦しくなる(いわゆる黒歴史)…
子どもはワガママで傲慢で考え無しの生き物。なぜなら、知識と経験と相手の身になって考える想像力が足りないから。
でも、それが罪になるのなら、人生は厳し過ぎると言えるかも。
子どもでも、その時出来る精一杯で優しくしたり、相手を気遣ったり、自分の欲を我慢したり、難しいけど、出来る範囲で頑張るべきだとは思う。
ただ、子どものキャパは小さいから。そのキャパを超えて思わず取った行動に対しては、どこかで"ごめんなさい!"って反省して次に進まないと、きっと過去に囚われて今を生きられない大人になってしまう。
現実世界と表裏一体ながら遠いところにある"あちらの世界"。
正常な世界なら絶対に手に入らないものが、簡単に手に入ってしまうような"あちらの世界"。
そんな所に迷い込んでしまったら、しかもそれが子どもの時だったら、一生後悔するような過ちをしでかすかも…。
決してハッピーエンドでは終わらない。
だってそれで人生が終わる訳じゃないんだもん。これからも生きていかないといけない。
怪異ってそういうものでしょ?だから怖い。
恒川さんの描く怪異は、水墨画のような祭りの後のような、静かな物哀しさがあって秩序があってすごく美しい。
決してスプラッタでなく、日本の昔話的なそんな怖さを持つ世界は、覗かずにはいられない、強烈な引力と魅力を持っていました。