にゃんこくらげの読書日記

にゃんこくらげの読書日記

本好きの会社員が、好きなように本の感想を書くだけのブログです!

『ジョーカー・ゲーム』-騙される"快感"は小説ならでは

f:id:nyankokurage:20210915204946j:image

#ジョーカー・ゲーム

(#ジョーカーゲーム)

#柳広司

#あらすじ

大日本帝国陸軍内に設立された秘密組織、通称"D機関"。

これはスパイを養成する学校だが、「軍人でなければ人に非(あら)ず」がまかり通る軍の中で、陸軍士官学校や陸軍大学の卒業生ではなく、一般の大学を出た者を未来のスパイとして教育することは、大変な反発を呼んだ。

しかし、かつて自身も優秀なスパイであった結城中佐はこれを押し通す。

曰く、スパイとは見えぬこと、そしてとらわれぬこと…


見つかるはずの無い証拠探し

どこまでもグレーな人物への決着

あらゆる困難な任務にも対応していくスパイの卵達と、それを牛耳る結城中佐の短編5作品

 

 

※2作目『幽霊(ゴースト)』

横浜の英国領事公邸では、連日、総領事グラハムと服の仕立て屋で働く青年蒲生がチェスに興じている。

チェス好きのグラハムが強引に蒲生を誘った形だが、実は密かに爆弾テロ策謀の容疑がかかっているグラハムの白黒を見極める為に、D機関所属の蒲生が仕掛けた結果である。

調査を進めてもグラハムはどこまでもグレー。だが、判断期限はすぐ間近に迫っている。いよいよ蒲生は実力行使し、グラハムのある秘密を目にする…


#感想

現実では絶対好きにならないけど、フィクションだと俄然好きになっちゃうキャラっていませんか?


嘘つきで生意気で平気で人殺したりするけど、特定の人にだけはめちゃくちゃ懐く猫っぽい男子だったり、

チャラチャラしててちょっと抜けてて女に目が無いくせに、実は切れ者で将来の夢は貧乏人からは金を取らない医者ですみたいな奴だったり。

(趣味がバレる)


本作の登場人物なんかもまさにそう。

スパイになるべく集まった一流大学を出た秀才達。彼らにあるのは忠誠心でも野心でもなく、「これくらい俺に出来なくてなんだ」という自尊心と人生に対する退屈さ。

パンパンに膨らみ切ったその厄介な代物を発散させてくれるのが、D機関、ただそれだけという感じ。


あらゆる人物になりきり、その為には複数の語学・金庫破り・はたまた女の扱いまでマスターして任務をこなす。

そこには情熱も信念もロマンも無いのに、なぜだろう。カッコ良く見えちゃうんですよ!


スパイは手の内も心の内も明かさない。彼らはコピーし潜入し、時には捕らえられ、それでも淡々と任務をこなしていく。

騙されるのを気持ち良く思えるのは読者の特権。騙されたと思って読んでみては?

プライバシーポリシー お問い合わせ