#マリオネットの罠
#赤川次郎
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#あらすじ
フランス帰りの上田修一は、K大学の研究生。大学教授の紹介で、住み込みでフランス語の家庭教師をすることになった。
教え子になるのは大金持ちの峯岸姉妹。姉妹が暮らす館の近くでは、トラック運転手の殺人事件があり、犯人はまだ捕まっていない。
修一の婚約者、美奈子は心配するが修一は意に介さない。
しかし、修一は峯岸家で暮らす内に違和感を覚える。"この家には何かがあるのだ"
そうして再び殺人鬼が動き出す。
#感想
赤川次郎と言えば、明るくコミカルなミステリーが印象的だが、本作は全く様相が異なっている。
物語の始まりは、秋雨けぶる人気の無い道路。そこを走るトラック、そして現れた赤いレインコートの女…
出だしからして不気味なホラー色が漂っている。
赤川次郎と聞いて、まず三毛猫ホームズを連想する私は、この後きっと冴えない刑事かお茶目な女子大生でも登場し、ドタバタしながら推理劇を展開するもんだと決めつけていた。
まぁ、半分は違っていないのだが、『マリオネットの罠』はそのようなドタバタ喜劇ではない。
被害者の背景を描き、感情移入させた所で躊躇いなく殺していく無慈悲な筆と、スリリングな話運び。
次の展開が読めるようで、でも必ず裏切られる。
私のように赤川次郎はコメディミステリこそ面白いと思っている方に、是非読んでほしい。
ちなみにこの本は1981年に刊行されている。
その為、少々時代錯誤なところはあるものの、面白さには全く支障が無いと自信を持ってお勧めする。