にゃんこくらげの読書日記

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『小太郎の左腕』-時代に似合わぬ優しさは何をもたらすか

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#小太郎の左腕

#和田竜

#あらすじ

戦国の世、勢力争いが苛烈になっていた戸沢家と児玉家。


他国に名を轟かす程の剛の者、戸沢家の林半右衛門は戦で深手を負い山に落ち延びた。そこで半右衛門と家臣の三十郎は、不思議な少年小太郎と身内らしき老人要蔵に出会う。

半右衛門は命を救った小太郎と要蔵に礼をすると申し出るが、要蔵は自分達のことは忘れろとすげない。

しかし、小太郎が願い通り鉄砲試合に出場したことで、運命は大きく動き始める。


#感想

タイトルは『小太郎の左腕』だけど、主人公はほぼ林半右衛門でした。

感覚的には『黄金の種子島』、とか『秘された銃』って感じで付けたタイトルなんじゃないかと思います。

何のことか分かりにくいですよね。


つまり、"小太郎の左腕"はそれ自体が人の運命を狂わせる程の名器であり凶器で、本作は小太郎についてというより、"小太郎の左腕"によって運命を狂わされた人々を書いてる、そういう作品だと示したタイトルなんじゃないかな、と思うんです。


ツラツラ言いましたが、内容については、面白く読みました。

結構戦闘場面が多くて、また小太郎以外の登場人物が当時の時代柄なのか血の気の多い奴らばっかりで(笑)、芝居に見入るのと似た感覚で読み進めました。

無骨な書き方がまた雰囲気に合っています。


後半では少し山田風太郎のような色合いも出て来ました。

ちょっと戸惑うけど、私は嫌いじゃありません。

和田さん、以前に忍者モノ書いてたしね。


そしてラスト、小太郎含め、その左腕に運命を狂わされた男達の物語が収束します。

良くも悪くも、人の本質は簡単に変わらず、また無理に変えては生きにくい。

血気たぎる派手な芝居のような作品だっただけに、ラストは少し寂しい気もしました。でもその寂しさが、祭りの後って感じで味なのかも。

淡々と書きましたが、ウルウル来ました。

 

追伸

久しぶりに感想up出来た。

またちょいちょい書き出したいな

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