#子犬のプレリュード
#荻原規子
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#あらすじ
父の転属で家族がロンドンへ向かう中、渡会美綾は合格した大学に進学する為、一人日本に残ることにした。
一人で暮らすには広すぎる家で過ごすある日、美綾は迷子のパピヨンに懐かれる。飼うつもりはなくても放っておけなく、預かることにした美綾だったが、あろうことかパピヨンは喋り出し、しかも自分を八百万の神だという。
大学では、幼なじみの有吉智佳に再会する。更に智佳の紹介で、同じく幼なじみの澤谷光秋とも会うことになり、美綾は同じクラスだった香住という少年を思い出す。
中学3年の春に事故死した香住には、あまり良い思い出が無い。
ところが、智佳は澤谷に香住の霊が憑いていると言い出し…?!
#感想
人間になりたい神様と、普通の女子大生の話。
一見すると軽い内容になりそうなのに、大きな事件を起こさずに人の内面の複雑さを書き切る、さすがの荻原先生新シリーズ第一作目です。
真面目で常識的な美綾は、よりにもよって家族がいなくなった新環境で、超常現象ともいうべき今まで縁の無かった世界に関わります。
美綾の中の"神様像"とかなり異なる八百万の神(犬)は、あまり役に立たない割に、小難しいことを話します。
ぷんぷんしながらも、ちゃんとお散歩や餌やりをかかさない美綾ちゃん、推せる。
実は人って、自分で思っているより簡単に、自分に騙されてしまうと思う。それを経験するかどうかは、意志の強さは関係なく、運とタイミングのような気がします。
皆話さないだけで、特に真面目な人ほどあることだろうから、全然恥じなくて良い。
それより、そういったことがあることを認められる方が、強くなれるし人として信頼出来る。
逆に、簡単に人を騙して、そんな自分の深層心理をかえりみずにただの娯楽と言い切る人は、表面的に付き合うには面白いかも知らないけど、なんだか怖くて深入りしたくない。
そんなことを考えた作品でした。可愛いタイトルに、良い意味で似つかわしく無いテーマを秘めています。
シリーズ一作目だけど、単体でも楽しめる作品なので気軽に読んでみるのをオススメするよ\(^o^)/