#蜜姫村
#乾ルカ
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#あらすじ
昭和37年7月、瀧埜上(たきのうえ)村という山奥の辺鄙な場所を一組の夫婦が訪れた。
夫である山上(やまがみ)一郎は昆虫学の研究をしている。昨年、偶然ここで日本にいるはずのない異形のアリを発見したことで、もう一度フィールドワークにやって来たのだ。
妻の和子は医師である。夫にくっついて来た形だが、その技術が医療過疎である瀧埜上村の役に立つと信じていた。
しかし、親切だった村人達は、和子が医師として診ようと持ちかけると態度を一変させた。
この村には、彼らが医師を必要としない絶対的な存在"蜜姫さま"がいる。
そしてそれは、余所者には決して知られてはいけない秘密でもあった…
#感想
こういう世界観、大好き!
横溝正史的というか、隔離された村・訳知り顔の住民・秘密・深窓の美女…わっしょい!!
ずっと同じことを繰り返してきた時が、ついに動き出すというシチュエーションも胸アツ。
でも、大きな変化には決まって犠牲がつきものなんです。
グロい。
正直、結構グロい。
特に前半の山上夫婦の件は、ジワジワと嫌な方向に進んでるのが分かる息苦しさと、想像以上の絶望に、めまいを感じる程でした。
その時点で良くも悪くもこの世界に引き込まれてました。
割と古典的な話なので、途中で結末の予測はつくんだけど、それとは関係なく面白かった。
代々守って来たものをこれからも守る為に、犠牲を強いることを厭わない蜜姫。
威厳を持って、冷徹な程に徹底して約束を守り抜く姿には、姫と呼ばれ、かしずかれるだけの説得力があった。
生き様の美しさと残酷さが、なんとも耽美的。
"繋げていく為に守る"、受け継がれる血の記憶を私はしがらみに感じてしまったので、ラストには少し釈然としないものも…
だけど、これまで守り繋げてきた人たちを切り捨てて一人だけ幸せになろうとしたら、その方が残酷なのかもしれない。