#さよならドビュッシー
#中山七里
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#あらすじ
地元の名士にして大富豪である香月玄太郎を祖父に持つ香月遥は、ピアニスト志望。
持ち前の技量と努力の甲斐があり、特待生として音楽科への推薦も決まっている。
日々厳しい叱責に耐え続ける遥と共にレッスンを受けるのは、従姉妹の片桐ルシア。
両親を災害で亡くしたルシアには、香月家の養子になる話が持ち上がっており、元々仲の良い二人は姉妹になる予定だった。
しかし悲劇に見舞われる。
遥とルシアが玄太郎の住む香月家の離れに泊まったその夜、玄太郎の部屋から出火。
火事は、瞬く間に燃え広がり…
肉親と身体の自由を失った少女が、過酷な運命になぶられながらも必死で再起をはかる。
#感想
私の大好きな本の内の一冊です。
上品な世界観、強くあろうとする孤独な主人公、優しい理解者、恐ろしい秘密。
これぞ極上のエンターテイメント!
いや、心情を言うと、エンターテイメントなんて呼ぶには悲しく切な過ぎる話です。
たった数ページからでも伝わる、失くすには惜しい魅力を持った登場人物が早々に退場してしまいます。読者にとっては数ページでも、若干15歳の女の子は彼らと過ごしてきた長い時間と大切な思い出、更に元の声やピアニスト志望者にとっては命のように大切な、しなやかな身体までも奪われてしまったのです。
前半の明るく希望に満ちた曲調から、絶望と怒りの中盤へ、そして激しい闘いを経て終盤に向かいます。フィナーレは何者かから赦させたような、やっと解放された穏やかな気持ちが表れています。
中山七里が奏でる、間違いなく名曲です。