#夜行
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#あらすじ
私は学生時代に通っていた英会話スクールの仲間たちに声をかけ、10年ぶりに皆で鞍馬の火祭見物へ出かけることにした。
年齢も、今は住んでいる場所も違う5人。
でも10年前にはもう一人いたのだ。その日、行方不明になってしまった長谷川さんが。
私たちは貴船川沿いの宿で語る。『夜行』という不思議な銅版画に導かれるように、各々の物語を。
#感想
最後まで読んだ時に、朝を感じてもらえたら嬉しいと語った森見さん。「感じましたよ」と伝えたいな。
『夜行』は不思議な、不思議な物語だった。
かつて同じ英会話スクールに通った仲間たちが、10年ぶりに再会し、鞍馬へ旅し、そこでそれぞれが今までに経験した旅の思い出を語る。
彼らの語る話は、始めは何てことない内容なんだけど、次第に奇妙な風になり、読んでいるこちらに違和感と薄気味悪さを抱かせる。
一人が語り終わると次の人が話し出す。
その語られる話がちょっと現実離れしてるんだけど、誰もつっこまず普通に流されていくの。
夜行は、夜を行くと書くけど、まさに夜の世界、寝ている人の夢をあっちこっち覗いて回るような小説でした。
夜見る夢って、突拍子もなくて、でも見ている本人にはその不思議さが分からないじゃないですか。
多くの森見作品のテイストとは異なっていて、正直煙に巻かれる感じを苦手にも感じました。だけど最後まで読んでみると、自分なりの解釈と、根拠の無い微かな希望の光みたいなものを手にした気分。
まさにその、根拠の無い微かな希望の光って、鬱々と不安な夜を過ごした後に見る、朝日みたいじゃない?
そんな風に、私は朝を感じましたよ森見先生!
何より作中に何度も登場する「世界はつねに夜なのよ」この言葉の意味を知って、"あ、良いな。その考え好きだな"と思えました。本の中で好きな言葉に出会える、それって素敵な収穫ですよね。