#アレグリアとは仕事はできない
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#あらすじ
表題『アレグリアとは仕事はできない』と『地下鉄の叙事詩』の2作収録。
『アレグリアとは仕事はできない』では、主人公のOLミノベが、複合機アレグリアに振り回されてイラついている。
アレグリアはまるで我儘な女のように気まぐれでプライドが高く、少ししか動かないのにすぐ休む。そのくせ、男性社員が使用する際は問題なく良い仕事をするのだ。
ミノベは同じく女性社員のトチノ先輩と、この不満を分かち合いたいが、真面目で優しい先輩は愚痴っても仕方のない事柄に執着することはなく、ミノベは孤独を感じる。
しかしついに、ミノベが恐れる大量コピーの納期がやってきてしまう。
予想通りアレグリアが機嫌良く働くはずもなく、それは事件を引き起こす…
『地下鉄の叙事詩』では、不満いっぱいの乗客を乗せた満員電車の中の話。
4人の乗客の視点から、リレー式で話が進められる。
#感想
ポップな表紙から、明るいお仕事コメディーかと思ったらとんでもなかった。
主人公ミノベはのっけから複合機のアレグリアに怒っているのだが、ほとんど激怒と言っていい、すさまじい怒り方なのだ。
こんなに怒るか⁈と思うが、読み進めるとミノベの不満と孤独がないまぜになった鬱々とした心境が伝わってくる。
ミノベ本人はそんなにヤバくも、根性がねじくれてもいないのだろう。ホントは。
"組織の中の個人"が持つ問題が、彼女達を追い詰めるのだ。
でも、要所のユーモラスな書き方にはクスッとさせられ、それが救いだった。
私が好きなシーン
P.41
常に、どうやったらうまく手を抜いて仕事ができるかについて考え、そのことにあくせくするあまり、気がついたらむやみに勤勉なことになって無駄に動いている自分と比べて、先輩は泰然自若としているように思えた。
2作目は、おっと、なかなか重たいゾ。
登場人物、全員何かしらの不満と不安を抱え、負のオーラ全開の狭い車内での出来事。
満員電車なので、身体の距離が近く、どうしても周りの乗客を意識し更に不満を募らせていく。
ただ、語り部が変わると分かる、自分が思っていることはそのまま思われているということだ。
それがだんだん面白味を出してくる。
ペラペラだった登場人物に、違う角度からの視点が加わって厚みが出てくる。
短いけどどちらの話も上手いな、と思った。