#リラ荘殺人事件
#鮎川哲也
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#あらすじ
元成金社長が贅をつくして建てた後、拳銃自殺を図ったという曰く付きの別荘。大学のレクリエーション寮になったそのリラ荘へ、美術学部と音楽学部7名の学生が夏休みを利用して訪れる。
翌日、盗まれたトランプカードのスペードのAと共に男の死体が発見される。男の側には学生の内の一人、尼リリスのレインコートが落ちていた。もしや男は間違って殺されたのか?
不穏な空気を払うようにチェスに乗じる学生達。ところが松平紗絽女が毒に倒れ、スペードの2が発見される!そして事件はそれに留まらず…
#感想
昭和51年初版の本格ミステリです。
鮎川先生といえば、綾辻さん等"新本格ミステリ"と呼ばれる作品が登場した際、新本格ミステリに批判的な一部の読者からの猛烈な新本格バッシングに、苦言を呈されたエピソードがあります。
また、鮎川先生の言葉に「本格ミステリーは書く上でかなりの困難を伴う。作者はつねにフェアでなくてはならない。大切なデータを伏せておいて、犯人は彼でありましたというようないい加減な作品を書いたのでは非難の集中攻撃をうける。(中略) こうしたタブーの他に、読者をだまくらかすためのあの手この手を考えることも必要だ。しかもそうしたテクニックは、たとえ自作のなかにでも二度と使うわけにはいかない。」というものがあります。
…え、ちょっと
カッコ良すぎるんですけど!!
これだけで、鮎川先生がいかにミステリというものに真摯に向き合い、歯がみし頭を掻きむしり血まみれで執筆されていたかが窺い知れるというものです(実際はもっとスマートかもしれない)。
そんな鮎川先生のキレッキレのトリックを味わえる作品。
(以降はちょっとネタバレ
未読で今後読むかもな人は引き返してね)
始め私は、尼リリスと牧の共犯なんじゃないかと推理しましたよ。
だって二人のアリバイは、二人によって証明されるケースが多いんだもの。
でもね、甘かったですよ。
途中、追加で無くなったトランプ。6桁の数字を記したメモ。橘の苦悩。この謎が解けないと、ちょっとアリバイが解けた気になってる位じゃ全体は見えないんですね。
私も、まんまと犯人にしてやられました。