にゃんこくらげの読書日記

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本好きの会社員が、好きなように本の感想を書くだけのブログです!

『ストーリー・セラー』-有川浩の見せる切なさの極み!

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#ストーリー・セラー

(#ストーリーセラー)

#有川浩

#あらすじ

致死性脳劣化症候群。

物を考えれば考えるほど、頭を使えば使うほど脳が劣化し、記憶出来なくなる未知の病にかかってしまった妻。

考えることがすなわち生きることと同義の彼女は、嘆き怒りやがて憔悴していった。

そんな彼女を支える夫。

夫婦の願いとその結末とは…


#感想

久しぶりにめっちゃ泣かされた。

有川さんの小説って、あまり読んでこなくて、なんなら途中でフェードアウトしてしまった物もあったり…。

ごめんなさい。でもこればっかりは相性だと思うの。


今回のストーリー・セラーにも、本読みの"彼"が言う

『読む側』の俺たちは単純に自分の好きなもんが読みたいんだ。だから自分の好きじゃないもんに当たっても、それは外れだったって無視するだけなの。ベストセラーでも自分にとって外れのこともあるし、その逆もあるし。

ってセリフがあるんだけど、まさにそれなんだよなぁ!

こんな風に、ストーリー・セラーには本読みにとっての"あるある"が散りばめられている。

そしてまさに、ストーリー・セラーは私にとって"当たり"だったわけ。


日本を代表する大人気作家の有川さん。私なんかが失礼ながら、その苦手さを語らせてもらうなら(ホントに失礼)、有川作品の魅力でもある登場人物の"青々しさ"と"王道をまっすぐ行くむずキュン"、これが別の意味でたまらんのよ(>_<)

…なんか、ひねくれ度合いがバレてしまうけど。


ともあれ、今回の主役は本読みの"彼"と、書く側の"彼女"。この二人が運命的に出会って、徐々に距離を詰めていき、最高で最強の夫婦になる。

そんな話だから、苦手を彷彿させそうなもんなんだけど、最初の3ページで持ってかれたわ。


間の空け方 聞いたことない設定 主人公への共感

さすがです。


ストーリー・セラーはsideAとsideBの2編で構成されてるんだけど、そう聞くとよぎる人もいるんじゃないかな?

あの傑作、乾くるみイニシエーション・ラブ


まさか、まさか有川浩に限ってそんなことないよね?だって青春モノを書かせたら随一の作家だよ?

まさかあんなエグい結末なんてことないよね?


怯える気持ちも無きにしもあらずでしたが、結果から言うとそんな事なかったです(ですよね!)。

でも、2作で1作品といえる世界観は共通するものがあって、それも今回ツボだった。


ネタバレってほどではないけど、あんまり言うより読んでみてほしい。

結局それしかない。

『ダレン・シャンⅨ』-ダレン、永遠に失う…

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#ダレン・シャン

#夜明けの覇者

(#ダレンシャンⅨ)

#DarrenShan

#ダレンシャン

#あらすじ

バンパイア元帥の一人、バンチャが合流し、更にデビーとスティーブが仲間になったと思ったのも束の間!

やはりスティーブは味方ではなく、しかもバンパニーズになっていた


バンパニーズに囲まれたダレン達はデビーを人質に取られるも、何とか脱出。

しかしスティーブの策略で、連続殺人鬼の容疑で今度は人間の警察に追われることになってしまう


果たして無事にバンパイア大王を討てるのか、そしてデビーを救えるのか?!

息を飲むバトル必須の第9巻。


#感想

(ここからはネタバレを含みます。

  今後読むかもな人は引き返してね!)

 

 

 

 

 

 

なんということ…

ダレンと我々読者は、とても大切な人を失ってしまう。


オレンジ髪の皮肉屋、

無愛想だけど本当はとても情に厚く、

とびきり頭が固くそれでいてシャレっ気のある…


クレプスリー。


間違いなく、ダレン・シャンシリーズの中で一番好きなキャラクターだった。

これからクレプスリーのいない『ダレン・シャン』をどう楽しめば良いと…?


それにしても今回の筆者は少しズルい。

あんな風に喜ばせて、実は嘘でした、は夢オチ以上にひどくないだろうか?

悲しみにくれながら、次巻へ続く。

『十字架のカルテ』-現役医師の書く医療ミステリー

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#十字架のカルテ

#知念実希人

#あらすじ

精神鑑定医を目指す新米医師の弓削凛(ゆげりん)は、勤務する病院の院長であり、精神鑑定の第一人者である影山司に教えを乞うていた。影山の鑑定には妥協がなく、検察からも一目置かれている。


正解を見つけることが最も難しい、人の内面。それを推し測った上での鑑定結果で、罪を犯した人間への処置はガラリと変わる。重大犯罪を犯した者も、心神喪失と鑑定されれば不起訴になる。


白昼の新宿で無差別に人を襲い血まみれで自己紹介をする若い男、我が子と心中を図り一人生き残った産後うつの母親など。影山は、彼らの心に巣食う闇をじっくりと覗き込み、鑑定結果を告げる。

影山の元で学ぶ凛は、やがて自らが精神鑑定医を志すきっかけとなった事件と向き合うことになる。


現役医師、知念実奇人の描く巧妙な医療ミステリー


#感想

周知の事実ですが、作者の知念先生は現役のお医者さん。

現役医師というお立場なので、病院を舞台にされた作品が多いです。


勉強不足の為、何科を専門にされているのか存じ上げないのですが、今回は“精神鑑定”というテーマを取り上げられているのは、「あらすじ」の通り。

病院勤務といえども病院関係全てに精通されてる訳ではないでしょうに、今回は刑法第39条も大きなキーになっているので多分すごく調べられたんだろうなぁ。

頭の良い人は知識欲も旺盛なのかしら。

 

今回は短編が集まって大きなストーリーが出来上がっている作風なのだけど、個人的にこういうの大好物です!

あの、徐々に見えないところが見えてくる感じ。見えてた世界が更にひらけて広がっていく感じ。

わくわくドキドキしませんか(キュン)

 

最初は“精神鑑定”っていう永遠に答えの出ないテーマに、これは重いぞ!と覚悟して臨んだのね。

でも、真面目で良い子なのについつい心の声が漏れがちな凛や、切れ者だけどちょっと皮肉屋なホームズ的役割の影山先生が良いキャラしてて、胃もたれを起こさせない仕様になってます。

更に今回のオススメポイントは、最初見えてた側面がガラリと変わる楽しみを短編作分味わえるというところ!

つまりご馳走×5!ありがとうございます!

 

もちろんテーマがテーマなので、切なく沈む話も多いんだけど、ちゃんと希望や温かさを残してくれる。それが知念先生の良さだと思うのです。

『ジョーカー・ゲーム』-騙される"快感"は小説ならでは

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#ジョーカー・ゲーム

(#ジョーカーゲーム)

#柳広司

#あらすじ

大日本帝国陸軍内に設立された秘密組織、通称"D機関"。

これはスパイを養成する学校だが、「軍人でなければ人に非(あら)ず」がまかり通る軍の中で、陸軍士官学校や陸軍大学の卒業生ではなく、一般の大学を出た者を未来のスパイとして教育することは、大変な反発を呼んだ。

しかし、かつて自身も優秀なスパイであった結城中佐はこれを押し通す。

曰く、スパイとは見えぬこと、そしてとらわれぬこと…


見つかるはずの無い証拠探し

どこまでもグレーな人物への決着

あらゆる困難な任務にも対応していくスパイの卵達と、それを牛耳る結城中佐の短編5作品

 

 

※2作目『幽霊(ゴースト)』

横浜の英国領事公邸では、連日、総領事グラハムと服の仕立て屋で働く青年蒲生がチェスに興じている。

チェス好きのグラハムが強引に蒲生を誘った形だが、実は密かに爆弾テロ策謀の容疑がかかっているグラハムの白黒を見極める為に、D機関所属の蒲生が仕掛けた結果である。

調査を進めてもグラハムはどこまでもグレー。だが、判断期限はすぐ間近に迫っている。いよいよ蒲生は実力行使し、グラハムのある秘密を目にする…


#感想

現実では絶対好きにならないけど、フィクションだと俄然好きになっちゃうキャラっていませんか?


嘘つきで生意気で平気で人殺したりするけど、特定の人にだけはめちゃくちゃ懐く猫っぽい男子だったり、

チャラチャラしててちょっと抜けてて女に目が無いくせに、実は切れ者で将来の夢は貧乏人からは金を取らない医者ですみたいな奴だったり。

(趣味がバレる)


本作の登場人物なんかもまさにそう。

スパイになるべく集まった一流大学を出た秀才達。彼らにあるのは忠誠心でも野心でもなく、「これくらい俺に出来なくてなんだ」という自尊心と人生に対する退屈さ。

パンパンに膨らみ切ったその厄介な代物を発散させてくれるのが、D機関、ただそれだけという感じ。


あらゆる人物になりきり、その為には複数の語学・金庫破り・はたまた女の扱いまでマスターして任務をこなす。

そこには情熱も信念もロマンも無いのに、なぜだろう。カッコ良く見えちゃうんですよ!


スパイは手の内も心の内も明かさない。彼らはコピーし潜入し、時には捕らえられ、それでも淡々と任務をこなしていく。

騙されるのを気持ち良く思えるのは読者の特権。騙されたと思って読んでみては?

『ダレン・シャンⅧ』-再会は波乱の合図

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#ダレン・シャン

#真夜中の同志

(#ダレンシャンⅧ)

#DarrenShan

#ダレンシャン

#あらすじ

バンパニーズ大王を倒す旅に出た、ダレン達。

旅の途中、クレプスリーの故郷であり、ダレンが昔死闘を繰り広げた街で、再び連続殺人事件が起こっていることを知る。


バンパイアのクレプスリーとリトルピープルのハーキャット、そして半バンパイアのダレンは街へ向かうことを決意。

夜な夜なバンパニーズが関わっている証拠探しに奮闘する。


しかし思わぬ訪問者が現れ、ダレンはなんと学校へ通うことに?!

しかもその学校で待っていたのは意外な人物で…


驚きの展開!ダレンシリーズ第8弾。


#感想

(ここからはネタバレを含みます。

  今後読むかもな人は引き返してね!)

 

 

 

 

 


まさか、まさか!

3巻でダレンが出会った女の子、あのちっちゃいデビーが教師として登場!

生徒と教師の禁断の恋が始まる…ような始まらないようなっ

あながち、まったくトンチンカンなことを言っている訳ではなく、ダレンは大いに再会したデビーに心奪われます。


でも、見た目は子ども頭脳は大人な、どこかの探偵のようなダレン。そして何より、二人の関係は教師と生徒…!

また淡い展開になるかと思いきや、今回はなんとあの因縁の相手も登場だ!


誰かって、ティーブですよ!

ダレンがバンパイアになるきっかけとなった(元)少年で、ダレンの(元)親友。

いつかは登場すると思ってた!


ダレンに、憧れの"バンパイアになる"という立場を奪われたと思っているスティーブ。

最後に会った時は呪詛の言葉を投げつけていたけど、再会したスティーブは自分の過ちに気づいたと言っていて…?


ほんまかー?

あっさり信用しちゃうあたり、ダレンは実年齢よりまだまだ子どもだな。

と思う反面、バンパイアという異常な世界の中でも、仲間に支えられながらやってこられた経験がダレンの心を真っ直ぐにしているのかも、と感じて少し嬉しい気も。


その点、海千山千のクレプスリーは思いっきり疑ってます笑

さてさてどうなるんでしょうか?!

もちろん読み終わっているので分かっているんだけど、本当の結末は次巻へ持ち越しなのでドキドキです!

 

▼前作7巻はこちら

▼デビーの登場巻はこちら

『甘美なる誘拐』-甘美なるミステリで酔わせて

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#甘美なる誘拐

#平居紀一

#あらすじ

真二と悠人はヤクザ予備軍のチンピラ。上司にあたる麦山組の荒木田にこき使われ、毎月のノルマに段々首が回らなくなってきた。

ついには麦山組がケツ持ちをする、稲村という金貸しの世話にまでなる。その日もまた稲村の元を訪れた二人だが、そこで目にしたものは、死体と開きっぱなしの金庫で…


植草部品は、父娘の他は社員が一人にバイトだけの小さな会社だが、得意先も付いていて、贅沢しなければ十分に暮らせていけた。

ところが地上げ屋から嫌がらせを受けるようになり、バイトは辞め、商売にも差し障りが出始めた。親子は、若い頃暴走族のアタマとしてならし、今は自動車修理を生業とする菅谷に相談することに…


点と点はどんどん大きくなり、予想を超えた結末へ転がり出す!

このミステリーがすごい、グランプリ受賞作品。


#感想

タイトルには誘拐とあるものの、なかなか誘拐事件に辿り着かない。

様々な事件が、各々の場面で起こるからだ。


ヤクザもどきのチンピラ2人は殺人現場に遭遇し、そこへやって来た訪問者をうっかり殴り倒して逃げちゃうし、部品屋の父娘は地上げ屋から嫌がらせを受け、あわや倒産という事態まで追い込まれるし。

うーん、誘拐とは関係ないけど、どれも気になる!


そうして、テンポ良く進むのと、真二と悠人の楽しいやり取りで飽きはしないのだけど、そろそろ誘拐はいつ?と思っているところで誘拐勃発!

しかしその頃には、宝くじ騒動やら暴力団との抗争やらと益々事件が事件を呼び、もはや物語は雪だるま状態である。


これは回収不可能かと思われたそれぞれの事件が、するするる…

まるでほどける音が聞こえるように一気に終結へ向かう様は、気持ち良いの一言!

何これ、楽しい!


ついにはピンと張り、お前一本だったんかい!とか言いながら手繰り寄せた紐の先には、別の意味で気持ちの良いラストが待っている


こんな時代だからこそ、気持ちが軽くなる爽やかなラストまで是非。

それにしても"このミス"は、スベらんな〜

『革命前夜』-圧倒的現実に立ちすくんでも

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#革命前夜

#須賀しのぶ

#あらすじ

時は1989年、ピアノに打ち込む眞山柊史(まやましゅうじ)は、敬愛するバッハを感じながら理想の音を求める為、ドイツドレスデン音楽大学に留学する。

やっとの思いでやってきたドイツだったが、東西に隔てられ彼らがDDRと呼ぶ東ドイツは長い貧困と圧政に色を失っていた。


戸惑いながらも必死にピアノへ向かう柊史だが、同じく音楽大学に通う学生達の才能と技術に圧倒され、次第にスランプに陥っていく

更に、素晴らしい天才だが自己中心的で奔放なバイオリニスト、ラカトシュに目をつけられ練習に付き合わされることになり、柊史はますます自分を見失いスランプを深刻化させる


もがき苦しむ柊史は、ある日教会で運命的な演奏に出会う。オルガンを奏でる美しい女性はクリスタといい、その才能は疑いようがない。にもかかわらず、彼女はシュタージ(国家保安省)の監視下にあり、満足に演奏出来る環境になかった。


国に翻弄されながら、自由や理想といったそれぞれの思いを音楽に求める青年達の、激しい生き様を描く。


#感想

音楽を題材にして、人種差別や圧政からの脱却を描いた作品と聞くと、"音楽の前では人は皆何者でもなく平等だ"的な物語を想像します。


しかしこの物語は違う。

むしろ真逆で、ガンガンに生まれた場所が影響する。自国の貧富とか、肌の色とか家族とか…

音楽の前では皆同じ?平等?

なにそれ頭に花生えてんの?って位、平和ボケした気持ちで手に取ると、感情の無い絶対零度の目で蔑まれる。

前髪ひっ掴んで、無理矢理眼前に見たくも無い現実突きつけられる感じ。


頑張れば必ずしも結果が出る訳じゃないのはどの世界でも言えるけど、最もシビアなのは間違いなく芸術の世界だろう。

大人であれば分かり切っている事実だが、だからこそフィクションでは、努力したらしただけ報われる物語を見たいと思うのが人情。


作者の須賀女史は、読者のそんな細やかでかわゆいメルヘンな気持ちを筆(もしくはキーボード)でぶった斬る。

更に、生まれ等、自分ではどうしようもないことがどれだけ大きな壁になり得るかを見せつける。

未来あるキラキラ目の少年少女が読んだらトラウマ級だよ!どうすんの!


我々平和ボケした国の凡人は、子ウサギのように震えながら読み進めるしかない。

せめて、せめて見届けるのだ…


須賀女史の描く物語が素晴らしいのは、どんなに圧倒的な力を見せられてボッキボキに折られても、その中から必ず立ち上がって一矢報いようとする人物が現れるところだ。

その姿は気高く美しく、応援せずにいるなんて不可能。

まさに、信じたい"人間"の姿がそこにある。


須賀女史の巧みな飴と鞭によって導かれる先は、この坂を登り切れば頂上がある、そんな予感をはらんだ美しいラスト。まさに革命を感じさせる、注目だ。

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