にゃんこくらげの読書日記

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本好きの会社員が、好きなように本の感想を書くだけのブログです!

『ダレン・シャンⅧ』-再会は波乱の合図

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#ダレン・シャン

#真夜中の同志

(#ダレンシャンⅧ)

#DarrenShan

#ダレンシャン

#あらすじ

バンパニーズ大王を倒す旅に出た、ダレン達。

旅の途中、クレプスリーの故郷であり、ダレンが昔死闘を繰り広げた街で、再び連続殺人事件が起こっていることを知る。


バンパイアのクレプスリーとリトルピープルのハーキャット、そして半バンパイアのダレンは街へ向かうことを決意。

夜な夜なバンパニーズが関わっている証拠探しに奮闘する。


しかし思わぬ訪問者が現れ、ダレンはなんと学校へ通うことに?!

しかもその学校で待っていたのは意外な人物で…


驚きの展開!ダレンシリーズ第8弾。


#感想

(ここからはネタバレを含みます。

  今後読むかもな人は引き返してね!)

 

 

 

 

 


まさか、まさか!

3巻でダレンが出会った女の子、あのちっちゃいデビーが教師として登場!

生徒と教師の禁断の恋が始まる…ような始まらないようなっ

あながち、まったくトンチンカンなことを言っている訳ではなく、ダレンは大いに再会したデビーに心奪われます。


でも、見た目は子ども頭脳は大人な、どこかの探偵のようなダレン。そして何より、二人の関係は教師と生徒…!

また淡い展開になるかと思いきや、今回はなんとあの因縁の相手も登場だ!


誰かって、ティーブですよ!

ダレンがバンパイアになるきっかけとなった(元)少年で、ダレンの(元)親友。

いつかは登場すると思ってた!


ダレンに、憧れの"バンパイアになる"という立場を奪われたと思っているスティーブ。

最後に会った時は呪詛の言葉を投げつけていたけど、再会したスティーブは自分の過ちに気づいたと言っていて…?


ほんまかー?

あっさり信用しちゃうあたり、ダレンは実年齢よりまだまだ子どもだな。

と思う反面、バンパイアという異常な世界の中でも、仲間に支えられながらやってこられた経験がダレンの心を真っ直ぐにしているのかも、と感じて少し嬉しい気も。


その点、海千山千のクレプスリーは思いっきり疑ってます笑

さてさてどうなるんでしょうか?!

もちろん読み終わっているので分かっているんだけど、本当の結末は次巻へ持ち越しなのでドキドキです!

 

▼前作7巻はこちら

▼デビーの登場巻はこちら

『甘美なる誘拐』-甘美なるミステリで酔わせて

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#甘美なる誘拐

#平居紀一

#あらすじ

真二と悠人はヤクザ予備軍のチンピラ。上司にあたる麦山組の荒木田にこき使われ、毎月のノルマに段々首が回らなくなってきた。

ついには麦山組がケツ持ちをする、稲村という金貸しの世話にまでなる。その日もまた稲村の元を訪れた二人だが、そこで目にしたものは、死体と開きっぱなしの金庫で…


植草部品は、父娘の他は社員が一人にバイトだけの小さな会社だが、得意先も付いていて、贅沢しなければ十分に暮らせていけた。

ところが地上げ屋から嫌がらせを受けるようになり、バイトは辞め、商売にも差し障りが出始めた。親子は、若い頃暴走族のアタマとしてならし、今は自動車修理を生業とする菅谷に相談することに…


点と点はどんどん大きくなり、予想を超えた結末へ転がり出す!

このミステリーがすごい、グランプリ受賞作品。


#感想

タイトルには誘拐とあるものの、なかなか誘拐事件に辿り着かない。

様々な事件が、各々の場面で起こるからだ。


ヤクザもどきのチンピラ2人は殺人現場に遭遇し、そこへやって来た訪問者をうっかり殴り倒して逃げちゃうし、部品屋の父娘は地上げ屋から嫌がらせを受け、あわや倒産という事態まで追い込まれるし。

うーん、誘拐とは関係ないけど、どれも気になる!


そうして、テンポ良く進むのと、真二と悠人の楽しいやり取りで飽きはしないのだけど、そろそろ誘拐はいつ?と思っているところで誘拐勃発!

しかしその頃には、宝くじ騒動やら暴力団との抗争やらと益々事件が事件を呼び、もはや物語は雪だるま状態である。


これは回収不可能かと思われたそれぞれの事件が、するするる…

まるでほどける音が聞こえるように一気に終結へ向かう様は、気持ち良いの一言!

何これ、楽しい!


ついにはピンと張り、お前一本だったんかい!とか言いながら手繰り寄せた紐の先には、別の意味で気持ちの良いラストが待っている


こんな時代だからこそ、気持ちが軽くなる爽やかなラストまで是非。

それにしても"このミス"は、スベらんな〜

『革命前夜』-圧倒的現実に立ちすくんでも

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#革命前夜

#須賀しのぶ

#あらすじ

時は1989年、ピアノに打ち込む眞山柊史(まやましゅうじ)は、敬愛するバッハを感じながら理想の音を求める為、ドイツドレスデン音楽大学に留学する。

やっとの思いでやってきたドイツだったが、東西に隔てられ彼らがDDRと呼ぶ東ドイツは長い貧困と圧政に色を失っていた。


戸惑いながらも必死にピアノへ向かう柊史だが、同じく音楽大学に通う学生達の才能と技術に圧倒され、次第にスランプに陥っていく

更に、素晴らしい天才だが自己中心的で奔放なバイオリニスト、ラカトシュに目をつけられ練習に付き合わされることになり、柊史はますます自分を見失いスランプを深刻化させる


もがき苦しむ柊史は、ある日教会で運命的な演奏に出会う。オルガンを奏でる美しい女性はクリスタといい、その才能は疑いようがない。にもかかわらず、彼女はシュタージ(国家保安省)の監視下にあり、満足に演奏出来る環境になかった。


国に翻弄されながら、自由や理想といったそれぞれの思いを音楽に求める青年達の、激しい生き様を描く。


#感想

音楽を題材にして、人種差別や圧政からの脱却を描いた作品と聞くと、"音楽の前では人は皆何者でもなく平等だ"的な物語を想像します。


しかしこの物語は違う。

むしろ真逆で、ガンガンに生まれた場所が影響する。自国の貧富とか、肌の色とか家族とか…

音楽の前では皆同じ?平等?

なにそれ頭に花生えてんの?って位、平和ボケした気持ちで手に取ると、感情の無い絶対零度の目で蔑まれる。

前髪ひっ掴んで、無理矢理眼前に見たくも無い現実突きつけられる感じ。


頑張れば必ずしも結果が出る訳じゃないのはどの世界でも言えるけど、最もシビアなのは間違いなく芸術の世界だろう。

大人であれば分かり切っている事実だが、だからこそフィクションでは、努力したらしただけ報われる物語を見たいと思うのが人情。


作者の須賀女史は、読者のそんな細やかでかわゆいメルヘンな気持ちを筆(もしくはキーボード)でぶった斬る。

更に、生まれ等、自分ではどうしようもないことがどれだけ大きな壁になり得るかを見せつける。

未来あるキラキラ目の少年少女が読んだらトラウマ級だよ!どうすんの!


我々平和ボケした国の凡人は、子ウサギのように震えながら読み進めるしかない。

せめて、せめて見届けるのだ…


須賀女史の描く物語が素晴らしいのは、どんなに圧倒的な力を見せられてボッキボキに折られても、その中から必ず立ち上がって一矢報いようとする人物が現れるところだ。

その姿は気高く美しく、応援せずにいるなんて不可能。

まさに、信じたい"人間"の姿がそこにある。


須賀女史の巧みな飴と鞭によって導かれる先は、この坂を登り切れば頂上がある、そんな予感をはらんだ美しいラスト。まさに革命を感じさせる、注目だ。

『人魚の眠る家』-善悪・正解不正解では決められない残酷な選択を前にしたらどうしたらいい?

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#人魚の眠る家

#東野圭吾

#あらすじ

和昌と薫子の夫婦仲は、和昌の浮気が原因で冷め切っていた。

せめて娘である瑞穂の小学校受験までは表面的に円満な家庭でいようと二人が面接試験の予行演習に出かけた日、瑞穂がプールで溺れ意識不明との連絡が入る。


慌てて病院に駆けつける二人。

しかし待っていたのは残酷な選択だった。

目を覚ますことのない瑞穂を脳死と認め臓器移植を行うか、元に戻ることはないと知りながら延命治療を行うか。


曖昧な脳死の定義国内でのドナーの少なさから来る問題に、鋭いメスを入れた東野圭吾の衝撃作。

 


#感想

脳死の定義がこんなに曖昧だなんて知らなかった…

脳死判定と呼ばれる諸々の検査を2回づつ行い、いずれも脳の機能が働いていないとされれば脳死と判断される。

裏を返せば、脳死判定を行わなければ脳死と言えず、脳死でなければつまり"死"でもないと…


この制度に、瑞穂の両親、特に母親である薫子は気も狂わんばかりに翻弄される。

当たり前だ!


(ここからはネタバレを含みます。

  今後読むかもな人は引き返してね!)

 

 

 

 

 

 

 


瑞穂が生きていると信じ、脳死判定の実施を拒み続ける薫子を誰が責められるでしょう…

確かに延命治療にはお金がかかるし、瑞穂のケアには更に莫大なコストと人手、各方面のサポートが必要

でも、それを叶えられるだけの財力が和昌にはあるし、和昌も渋々ではなく前向きに私財を提供しているんですね。


そうと分かっていても、薫子が強欲に思えてしまう瞬間があります。それはもうね、東野圭吾の手腕によるものだと思います。

そうやってね、読者に揺さぶりをかけてくるんですよ!東野圭吾という男は!


だって、仕方なくないですか?周りへの多少の迷惑と、大切な身内の命、天秤にかけるまでもないのが本当ですよ。

それが他人目線で見ると身勝手に映ってしまう…(映るように誘導する東野圭吾)

守りたい、奇跡を信じたいなんて当たり前の感情なんですけどね。


臓器移植を選択される本人とその身内の方は、とても悩んだとしても、理解があり非常に思いやりのある方達だと思います。その選択は誰かの命を救い、心からの笑顔を生む行為です。

でも、間違えてはいけないのは、延命治療を選んだ方が優しくないなんてことは絶対に無いということ。

作中にも出てきますが、臓器移植を受けられることは望んでも、誰かの脳死を望むことはしないでおこう…ドナーを待つ側も戦っている。それは関係者全員、特に選択を迫られた側が一度は意識し悩むことでしょう。だから、この問題に正解や善悪はない。


ホントのホントに誰も悪くない場合、結局は自分が後悔しない道を選ぶしかないんだよな。。。

どう、思いますか?

 

▼『人魚の眠る家』を読んだらコチラもオススメ

『さよならドビュッシー』-深い哀愁と激情、そして至高の美しさを感じる名曲

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#さよならドビュッシー

#中山七里

#あらすじ

地元の名士にして大富豪である香月玄太郎を祖父に持つ香月遥は、ピアニスト志望

持ち前の技量と努力の甲斐があり、特待生として音楽科への推薦も決まっている。

日々厳しい叱責に耐え続ける遥と共にレッスンを受けるのは、従姉妹の片桐ルシア。

両親を災害で亡くしたルシアには、香月家の養子になる話が持ち上がっており、元々仲の良い二人は姉妹になる予定だった。


しかし悲劇に見舞われる。

遥とルシアが玄太郎の住む香月家の離れに泊まったその夜、玄太郎の部屋から出火

火事は、瞬く間に燃え広がり…


肉親と身体の自由を失った少女が、過酷な運命になぶられながらも必死で再起をはかる


#感想

私の大好きな本の内の一冊です。

上品な世界観、強くあろうとする孤独な主人公、優しい理解者、恐ろしい秘密。

これぞ極上のエンターテイメント


いや、心情を言うと、エンターテイメントなんて呼ぶには悲しく切な過ぎる話です。


たった数ページからでも伝わる、失くすには惜しい魅力を持った登場人物が早々に退場してしまいます。読者にとっては数ページでも、若干15歳の女の子は彼らと過ごしてきた長い時間と大切な思い出、更に元の声やピアニスト志望者にとっては命のように大切な、しなやかな身体までも奪われてしまったのです。


前半の明るく希望に満ちた曲調から、絶望と怒りの中盤へ、そして激しい闘いを経て終盤に向かいます。フィナーレは何者かから赦させたような、やっと解放された穏やかな気持ちが表れています。

中山七里が奏でる、間違いなく名曲です。

『ラメルノエリキサ』-女子高生は爽やかに暴走する

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#ラメルノエリキサ

#渡辺優

#あらすじ

復讐は誰かの為にするものじゃない、大好きな自分がすっきりしていられる為にするものだ。

女子高生の小峰りなには復讐癖がある。

そんな"りな"が夜道で刺された。相手の手がかりはただ一つ「ラメルノエリキサ」。

警察なんかに渡さない、絶対自分でケリをつける?!


#感想

なかなかブッとんだようなお話。


主人公のりなは、"完璧なママ"が大好きで同時に厭わしく思うマザコンをこじらせている。

そういうのって結構あるよね。

親から注目されたい、関心を買いたいながらに自立したくて鬱陶しくもある。

そして自分のことなんて見てないように感じていじける…


そう、これはなさそうで意外とあるあるなお話なのだ。

普通だったら犯人を追い詰めて復讐しようとかしない。

嫌な目にあった時、とことん相手が嫌がることを考えて、肉体的もしくは社会的制裁なんて与えたりはしない。


でも、想像したことない?

私をいじめたあの子、ひどく裏切ったアイツを懲らしめる為に、例えばゲスなやり取りの履歴をスクショして公開しちゃうとか。


誰しも、とは言わないけど一度は考える妄想を現実にやっちゃう子がいたら、自分と関係ないなら、それって結構気持ち良いんじゃ…?


話の進め方にちょっと強引なところがあるのはご愛嬌。

サクッと読み進めて下さい、青臭かった人生の一時を振り返るみたいに。

『水族館ガール』-面白かわいい動物達と頑張るお姉さん!

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#水族館ガール

#木宮条太郎

#あらすじ

市役所で同じ仕事を3年間淡々と続けてきた嶋由香は、突然の人事異動で市立水族館へ出向となった。

右も左も分からないまま出向先の『アクアパーク』にやってきたが、資格も経験も知識も無い自分はどうやら歓迎されていないらしい。


配属されたイルカ課の先輩、梶はしょっぱなから「対等の意識がないと、名前では呼べない」とすげなく、チーフは絵に描いたような頑固親父。

最初は個々のイルカの識別すら出来ずに苦戦していた由香が、悪戦苦闘しながらそれでもめげずに頑張る青春お仕事コメディ


#感想

ライトな本を読みたくって手に取ってみた。

元々水族館は好きだし、爽やかなお仕事ノベルというのも良い。更に可愛い動物が出てくるなら、これは間違いない!


王道の、いきなり畑違いな職場に異動になったと思ったら、職場の人たち好意的じゃないしクセ強すぎだし私やることないし…

手は荒れるしネイルも出来ない。もう、素敵な彼氏が欲しいのに!

私、この先どうなっちゃうの〜?!

てかんじの話でした。


身も蓋もないかんじの書き方ですが笑

私としては、職場の生き物達の豆知識なんかが出てくるのが楽しかった。

繁殖期、イルカの鼻の使い方にはちょっと引いたけど…


それより由香が見る下ネタレベルの夢が、ちょっとね(汗

これは男の人が書く女の子だな〜、とつくづく思った。リアリティというか、あんまり共感要素が無い。

恋というより、なんか性欲ばっかり先走ってるし。

こんな可愛い表紙で、どんな感想だよ!


さて、ラノベ感は否めず(そもそもライトな本が読みたかったから間違えてはない)色々言いましたが、可愛い生き物の意外な生態が知れたり、失敗したり邪険にされてもメソメソせず割とあっけらかんとした由香ちゃんは読んでいて気持ち良かったです。


人気作品のようで2巻以降もあるらしい。

気が向いたら読んでみてもいいかなー。

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